セルフビルドのスタジオが出来るまで
いりやまずのおうち&スタジオのできるまで


音響スタジオの設計 定在波という問題
防音に一通り目処がついたところで、次は音楽スタジオの設計にかかります。

音は空気の波ですから、反射したり、曲がったりします。平行な面があると、その面の両側で音が同じように反射し、特定の周波数の音が増幅されてきます。これを定在波(常に在る波ですね)と呼び、スピーカー内部や、スタジオ、ホールでは、極力、定在波を避けるように設計され、壁が並行にならないようになっています。

こちらは英国のロイヤルアルバートホール。素晴らしい施設ですが、基本的に平行な面がどこにもないことに気がつきます。



こちらは愛知県名古屋市中区栄にあるクラシック専門のコンサートホール 宗次ホール。こちらもまた平行面はありません。正面と側面の波のような意匠は音響拡散体として機能しているのだそうです。



細かいルームアコースティックは施工後でも色々なものを追加したりして改良できますが、基本の部屋の形を変えることは出来ません。なので、設計、施工段階から平行面をなくす設計にします。平行面をなくせば定在波はなくなるので、2層目の壁を意図的に内側に曲げ、定在波をできるだけ少なくするようにします。

こちらが設計図で


こちらが実際の施工風景です。


エアコンと空調の問題
スタジオにおいてエアコンもまた大きな問題です。

今回作ったのは、録音もできる音楽スタジオなのですが、レコーディングとエアコンは相性が非常に悪いのです。エアコンは必要だけれども、レコーディングにおいてはエアコンの機械音、空気移動音は欲しくないのですね。

人間の耳は素晴らしく良く出来ていて、聞きたくない音を遮断する性質があります。無音だと思っていても、レコーディングしてみると、音がそこにあったりする。特にエアコンの空気音は見落とされがちな雑音です。

エアコンノイズをなくすためには、エアコンの機械を防音室の外に配置します。防音室は密閉空間なので、空気交換機も必要なのですが、それもまた雑音発生源ですので、部屋の中に置くことは出来ません。

機械系は全て防音室の外に置き、ノイズはそこで出してもらって、空気だけをレコーディングルーム内に引き入れるようにします。



こちらがエアコンからやってきているエアダクト。エアコンは室外に設置されています。


選択した機械はこちらです。
電源の問題
ヨーロッパやインドに行った人は体感しているかと思うのですが。向こうの音って、不思議とドライブ感があるんですよね。特に低音のドライブ感やスピード感は日本のそれとは全く違く、簡単に一言で言えば音が良いと表現できる感じでしょうか。

湿度や空気感の違いが理由であるなど色々言われるのですが、その中でも一番大きな理由は、使われてる電気の電圧にあります。日本が100Vに対し、ヨーロッパやインドは220V。同じ電力量を取り出すのにヨーロッパやインドだと日本の半分のアンペア数で済みます。電力の流れる過程に余裕があって、瞬間的に電力を取り出しやすくなるのです。

音楽はリアルタイムで電圧、電流が大きく変わるものですから、当然、電源に余裕があった方が良いに決まっています。その余裕がスピード感や、ドライブ感に繋がります。なので、200Vの電源を、全ての機材に供給できるようにします。

電源の位相も揃えます。
ちなみに、位相とはなんでしょう?

電気も音楽も音も、全ては波でできていますよね。

海の波を思い浮かべて頂くと分かりやすいのですが、波には高い所と低い所があり、その周期があります。同位相であれば波は大きくなるし、逆位相であれば波は消えます。位相がズレている波が交じると、波は汚くなります。その波の周期のタイミングのことを位相と言います。



この位相の問題は、スピーカーのセッティングをする時に非常に大きなポイントになり、音の出る位置が揃っていなず、その結果、少しでも位相が違うと、全体の音が綺麗にならなかったりする、とてもシビアであり繊細なものです。

今回は音ではなく電源のことなのですが。
スタジオで使われる音響用の電源は全て同位層で供給されるように設計します。


アースのこと
通常の電気機器であればアースはあまり重要ではありませんが、こと高音質を求めようとする音響機器にとってはアースはとても大切な問題です。この設計図では銅板を土に埋める筈だったのですが、施工の都合で、ぶっといアース棒を地中奥深くまで打ち込み、一本アースにしました。


<<< その2 – 防音の基本構造を決定する
 
その4 – さて作るぞ!! >>>

■いりやまずのおうち Blog - 各記事